人手不足と後継者問題を解決する地方銀行の『信頼ネットワーク』

2025年01月30日

地方の人材不足が顕著になった

地域の人材不足が顕著になってきています。地方の若者の働き手不足で、中手企業に入社する人が少なくなり、現場で働くスタッフが減ってきています。地方の人材の獲得合戦が熾烈化してきているのです。

私の知っている製造業者さんでも、日本人の働き手が減ってきて、現場の製造スタッフの3分の1が外国籍の方というのは普通で、多いところになると3分の2以上が外国籍のスタッフという会社もいっぱいあります。

地方の中小企業の後継者も不足している

このような働き手不足の中で、後継者問題も同じように出てきております。経営者の年齢で現在60歳前後から70歳の社長が経営している会社では、あと10年もすれば、後継者問題が必ず出てきます。現在はまだ社長が健康なので、なんとなく将来に向けて会社をどのように経営していくか、ぼんやり考えている会社が多いのです。そういった会社は10年後に、運が良ければ後継者が見つかって会社が継続できるか、もしくはM&Aで会社を売却して事業が継続できていると思います。しかし後継者が見つからなかったり、M&Aできなければ廃業したり、倒産したりということになるのです。

地域の中小企業が減ることは、地方銀行にとって大問題

地域にある中小企業には当然社員さんが働いていて、その社員さんにも家族がいらっしゃいます。日本の中小企業の割合は99.7%で、中小企業で働く人の割合は約7割です。特に地方ではこの傾向が顕著になります。地域経済にとって中小企業の経営が継続されるということは非常に重要なことなのです。その中小企業が後継者がいないということで無くなってしまえば、地域にとって大きな損失になるのです。そして中小企業の数が減れば、地域経済を基盤にしている地方銀行にとっても大きなダメージなのです。地域の中小企業の後継者問題をもっと積極的に解決していく必要性があると思います。

地方のM&Aはお金よりも信頼関係

地域の中小企業はぼんやりと後継者問題を考えていて、まだ真剣にそこまで危機感を持っていない会社が多くあるのです。それは経営者が今、困っているわけではないからです。しかしいざ困ったと思った時には、すぐに後継者問題を解決できるかというと、そうはできないのです。

地方の中小企業の事業承継やM&Aの問題は、その会社をいくらで売るかという金銭面の問題もあるのですが、それ以上に経営者の会社に対する思いがものすごく重要なのです。

中小企業の社長からすると、創業して長年経営した会社は我が子と同然なのです。その我が子を見ず知らずの人に渡すということは非常に辛いことなのです。だから先方には自分が作ってきた会社を大切に扱って欲しい。残る従業員に対して責任を持って欲しいという強い想いがあるのです。しかし、そういった経営者(人間)の機微に関わる部分を理解することは非常に難しいのです。

では、どのようにその中小企業の経営者の機微の部分を理解すれば良いのでしょうか。それは普段からその会社の経営者に寄り添って、信頼関係を作っているということが大切だと思います。経営者の人間性だったり、考え方を理解しておくことが重要です。

経営者の方は現状では、具体的に事業承継を口に出しているわけではない場合が多いのです。また、後継者問題を地方銀行の職員に具体的にいってくれる場合は稀です。なぜなら、信頼関係が作れてないと当然そういう事はいってくれないからです。そこでこの信頼関係を作るために、お客様のいろいろな困り事に対して常日頃よりサポートして、信頼を得ていることが重要なのです。

販路拡大のサポートが信頼獲得に有効

特に販路拡大に関するサポートが、非常に信頼関係を作るうえでは有効だと思います。なぜなら、販路拡大のサポートをするためには、その会社の商材やビジネスモデルを深く理解する必要があり、理解が進む中で事業承継を進めるうえでの問題点も浮き彫りにできるからです。

そして販売先を紹介したり、販路拡大の施策のサポートする中で、販路拡大をサポートする側の会社と、紹介した側の会社の両社が将来のM&Aの対象になる可能性があるのです。販売先として紹介して商売が始まっていれば、お互いに事業内容が把握できていて、両社がお互いに将来のM&Aの対象になれる可能性が高いと思うのです。

M&Aを目的とした営業活動の限界

最初にM&Aを目的とした営業活動をしてしまうと、どうしてもニーズが顕在化しているお客様にしか行きつきません。地域の中には潜在的な事業承継問題を抱えているお客様がごまんといるのです。潜在的なニーズを持っているお客様とつながっているということが、非常に重要なのではないでしょうか。つまり地域におけるお客様との『信頼で結ばれたネットワーク』を、どれだけ作っているかということが勝負になるということです。

『信頼ネットワーク』を早く築いたもの勝ち

人口減少問題で人材獲得があらゆる組織で難しくなる社会では、目先の収益を獲得する動きを中心にする経営だと非常にリスクがあると思います。ある程度現状の収益性が確保できるのであれば、地域における『信頼で結ばれたネットワーク』を築くということを中心に据える経営をした方が、5年後10年後を見たときには、遠回りのようで、収益性を上げる近道のような気がします。