『地方銀行ノマド』出版裏話
『地方銀行ノマド』に書いている事は私が、某地方銀行で働いていた内容を書いております。私は地方銀行で約30年間働いてきて、特に最後の5年間の活動内容を書いています。30年前に地方銀行に入り、約10カ所の支店と本部を経験しました。
楽しかった地方銀行での仕事
地方銀行での仕事で印象深いのは、転勤した各地域で中小企業がユニークな商材を使って商売をしていて、その中小企業の社長から事業の事や、商品・サービスの内容を聞くことでした。好奇心から会社の経営者の考え方や事業内容、商品サービスへの思いやこだわり、会社の歴史を聞いていると、そこの会社の物語を聞いているみたいで、いつも時間を忘れて経営者の方と話し込んでいることが多くあったのです。
一回の面談で2時間くらい話し込む事はざらにあり、長い時は5時間くらいぶっ通しで話しこむこともありました。それほどに地域の中小企業の社長から話を聞く事が楽しかったのです。そしてその話の内容から、次に取組んだら良い戦略の話であったり、新しい企画のアイディアを話して、実際に実行したりしていました。このような仕事の仕方をしていたので、先方の社長も私のことを変わった銀行員だと思ってくれて、面白がってお付き合いしてくれたのかもしれません。
WEBマーケティングサポートの開始
お客様にWEBマーケティングのサポートをし出したのは、銀行を辞める5年ほど前のことです。ご縁でWEBマーケティングの運用会社の若い社長と知り合いになったことをきっかけに、WEBの世界やWEBマーケティングの知識のことを教えてもらう機会を得たのです。
世の中を見てみると、GAFA等のビックテック企業が情報という切り口で、サイバー空間牛耳っている状況が分かりました。地方銀行と地域の中小企業はサイバー空間の中の情報の取り扱いについて、取り組みができていないという危機感が出てきたのです。そういった危機感が始まりで、WEBマーケティングを使ったお客様のサポートを始めたのです。
製造装置メーカーさんでの成功事例
最初に行ったサポートが、ある製造機械を作るメーカーさんでした。新商品を開発されたのですが、なかなか思うように売れてないという問題を抱えていました。ここでGoogle広告を使った情報発信の企画を、メーカーの担当者さんと、WEBマーケティングの運用会社と私(地方銀行)で行い、ターゲティング広告を開始したのです。そうすると、今まで注文の問い合わせが少なかったのが、どんどん入ってくるようになったのです。そこで初めてWEBマーケティングの力というものを、驚きをもって知ることができたのです。
既に情報を持っている地方銀行
なぜこの最初の成功ができたのかと考えたときに、これは地方銀行のお客様の経営情報や商品情報、困りごとの情報を地方銀行が既に知っており、この情報をWEBマーケティングの技術を使って情報発信できることがわかりました。
地方銀行が取り扱える情報は、お客様の数だけあるわけです。拡大解釈すれば地方銀行の地域ネットワークの数だけあるわけです。この情報を活用すればお客様に喜んでもらいながら、無尽蔵にWEBマーケティングを使った販路拡大サポートができると思ったのです。
地域の中小企業はこだわりを持った商材やサービスを作っても、売るための情報発信や集客をするのに苦労されています。この苦労されている中小企業にWEB広告を使った販路拡大のサポートをしていけば、地域の中小企業は助かるはずという思いに至りました。
コロナ禍が地域を襲う
そうしたWEBマーケティングのサポートを開始した矢先に、コロナ禍が地域を襲ったのです。地方の中小企業はリアルの事業活動ができなくなり、大きなダメージを受けました。そんな中で活路を見出したのがWEBマーケティングを使った販路拡大のサポートです。ここでWEBマーケティングを使った販売方法を取り入れることの重要性を痛感したのです。地方銀行の事業の中に、WEBマーケティングを使ったサポート業務を入れるべきだという考え方になっていきました。
ノマドワーカーの働き方
銀行を退職するまで、WEBマーケティングの運用サポートをしてくれている運用会社のメンバーと、お客様のサポートを行いました。
WEBマーケティングのサポートしてくれた運用会社のメンバーは、クライアントの仕事を日本全国飛び回りながらこなし、同時に携帯とパソコンだけで我々の地域のお客様の販路拡大のサポートをしてくれていました。
特定の場所や空間・時間に縛られずに、自分たちの特徴や強みを最大限に発揮している彼らの働き方は、今どきのノマドワーカーだと思ったのです。
そこに地方銀行員の私も、時間・場所に関わらず出張中でも、パソコン一つでメンバーと一緒にお客様のサポートをしている。私自身も地方銀行には所属しているが、ノマドワーカーのような働き方をしていると感じていました。
『地方銀行ノマド』的な働き方への思い
これからの地方銀行は人材の強みをより発揮させることが重要になってきていると思います。地方銀行も発想を柔軟にして、ノマドワーカー的な働き方で、人材の強みを発揮させて、より効率的な仕事ができる環境を作ることが重要だと思っています。少しでもこの『地方銀行ノマド』のような働き方ができる環境が、地方銀行の中にできれば、地域がもっと良くなるのでは、という思いが本を出版するきっかけになったのです。