プロジェクト型業務で、刈り取る営業から育てる営業へのスタイル転換

2024年12月08日

人口減少が襲う地域の人材不足の危機的問題

地方銀行の経営は、地域経済と切っても切れない関係性があります。地域経済にとって、今一番大きな課題は少子高齢化に伴う人口減少で、生産年齢人口の減少がいっそう進んで働き手が少なくなることと、それに伴う地域の消費が落ち込み、地域の経済は停滞していく可能性が非常に高いことです。生産年齢人口に該当する15歳から65歳の年齢層は、消費意欲が高く活発な経済活動を行う集団です。この層が少なくなると地域経済が停滞するのです。

生産年齢人口の統計推移を見ると、2000年には8,638万人、2025年は7,170万人、2040年は5,978万人と、これから15年で約1200万人が減少するのです。現在の東京23区の人口が約1000万人なので、東京23区の人口分以上の労働力がこれからの15年で無くなると思うと、この衝撃は想像を絶します。

このように、人口減少による日本の経済力の弱さが特に地方に表れていると思います。このような生産年齢人口の減少は、慢性的な人材不足に悩まされている地域の中小企業には大きな痛手なのです。特に経営を担える人材であったり、会社の中核を担える幹部社員が少なく、事業拡大や事業継続において、人材不足が足かせになってきています。

15年後の生産年齢人口を見ると、今後人員の確保はさらに厳しいものとなり、どんどん人が集まってくる状況にはないと思います。また中小企業の中核人材の不足については、経済のデジタル化が進展する中にあっては、より一層対応していくとことは難しい状況になってきていると思います。例えば、中小企業の社長が自社の製品が非常に良いと思っていても、それを世の中に発信する手立てがなかったり、ウェブを使って売れる方法等を知らないということが、地方の中にみられるのです。

刈り取る営業から、育てる営業へのスタイル転換

人口が増加していた高度成長期の時代は、獲得目標を掲げて、その目標に対して一生懸命に頑張って目標項目の数字を獲得することで成績が上がり、組織の業績も達成できていました。営業人員の労働量(時間)に対して成績がついてきていました。しかしこの営業スタイルは限界を迎えていると思います。生産年齢人口の減少による日本国内の消費量が減少し、同業者間の競争が激しくなっているためです。営業する人が、従来は100%の労働力で達成できていたものが、150%や200%の労働力をかけないと目標が達成できないのです。

一方で、働く人たちの人口は目に見えて減ってきているのです。従来の営業スタイルで、今までの業績を達成するためには、日本国内の消費の需要の減少と、働く側の労働人口の減少という二重の制約により、一人当たりの営業マンの負荷は2倍にも3倍にもなってくるはずです。これでは従来の営業の仕組みが成立するはずがありません。

ここで大切なのが需要を創造する(新たな付加価値を創造する)という発想です。プロジェクト型業務による育てる営業スタイルです。地域の中でまだ眠っている資源(コンテンツ)を世に出していくことや、地域の課題に対して解決策を打ち出すビジネスを、地域金融機関の社員さんがプロジェクトマネージャーとしてプロジェクトの中心となり活動し、プロジェクトを育てるという発想に転換していくことが重要なのです。

プロジェクトが、お客様、地域金融機関、地域の三者の利益になる

プロジェクト型業務は、お客様、地域金融機関、地域の三者の利益につながります。よいプロジェクトが軌道にのれば、新たに付加価値が地域のなかで創造されていきます。プロジェクト型業務による新しい付加価値の創造活動は、お客様、地域金融機関、地域の三者にとって良い活動になります。新しく創造した付加価値が生まれることで、お客様は当然喜びますし、またお客様はこのプロジェクトに関わってくれた地域金融機関に対して、創造した付加価値の一部を手数料として支払うことはやぶさかではないと思います。

そして地域にとっては今までに発生していなかった付加価値が地域の中で創造されていくことで、新たな経済価値が生まれるので、地域にとってもよいわけです。このプロジェクトをまとめているのが、地域金融機関の社員になるので、プロジェクトを通じた地域とのネットワークと信頼関係という無形の資産が構築され、地域の中で重要なネットワークが広がっていくと思います。

地方銀行の中でも、地域経済の人材不足と同じようなことが起こっています。資金需要の減少による金利競争の激化や、外部環境の変化により、支店の統廃合と人員の配置転換が起こっていることと、新たなサービスの導入により、現場はかなり混乱している状況にあります。そのように現場が混乱している中で、本来地方銀行が行うべきお客様のサポートが十分にできているとはいえない状況にあります。